米国民主党急進左派と格差是正のリスク

マーケットは民主党急進左派を警戒している。

しかしそのリアリティを感じている人は少ない。歴史的に見れば格差の是正は、実は市民の生活水準を下げる可能性が相当ある。

 

歴史的に定番の問題を繰り返すインテリ左派のバイアス

よく新聞などにある話↓

●資本主義は今までにない問題に直面している。
●その根源にあるのは富の格差だ。
●格差を是正するために再分配が急がれる。

知識ある人ほど、最近こういう考えにどっぷりつかっている。
格差に対するアレルギーが年々強まっており、先日も急進左派のサンダース氏がトップに並んだ。

しかし格差是正は歴史的に見れば何も新しくはない。資本主義の定番の問題だ。メディアやコメンテーターは、富の再分配がどれほど歴史的に失敗してきたか一言も言わない。だから僕が挙げておこうと思う。

 

 

富の再分配が裏目に出て衰退した事例

●チリのバチェレ政権

貧困者支援の支出拡大や、大学教育無償化などで有名だが、その財源は法人税の増税だ。彼女の主張は、企業経営者の投資を大幅に削減させ、GDPは6%から3%に低下した。

銅などの資源価格の下落が、経済低迷の理由だと言われているが、それは表面的な話だ。
なぜならチリは平均所得が15000ドルに達し、資源依存を打破する投資は可能だった。しかし、富の再分配を主張する大衆の波がチリにも押し寄せ、新しい投資を海外へ追いやってしまった。

 

●ジンバブエのムガペ政権

土地の再分配を進め、白人から土地を取り上げ黒人の国民に与えた。しかし彼らは農業を知らなかったために、生産は壊滅し、食料輸出国から輸入国になった。失業率は90%になり、ハイパーインフレが発生。1米ドルが3京5000兆ジンバブエドルになった。

植民地から独立をした国は、それまでの不満を支持基盤に取り込もうと富の再分配をすることがよくある。
他にもタンザニアのニウレレ政権や、ザンビアのカウンダ政権、バングラディッシュのラフマン政権、北朝鮮の金日成政権など。

 

●パキスタンのブトー政権

政権を奪取した彼は公約していた格差是正のために、一般市民の土地取得に上限を設定したり、次々と国内企業を国有化した。その結果は、ジンバブエと同じように、腐敗とハイパーインフレ、そして市民の生活水準の低下を招いた。

 

●フィリピンのエストラーダ大統領

エストラーダは地方市民の支持で大統領になった。高い経済成長の恩恵があった都市部の市民に、彼らは強い反感を持っていたためだ。地方市民の支持を維持するため、土地を分け与え、福祉支出を増やした。その結果、財政支出が拡大しインフレが加速、経済が失速し国民生活は悪化した。

 

●メキシコのエチェベリア政権

前政権は、新産業育成に積極的で、都市と地方の格差を生んだ。この不満を嗅ぎ取っていた彼は、外国資本の規制や、土地の再分配、食料補助金の拡大、電力や鉄鋼業企業の国有化などをアピールした。

そのため富裕層や海外投資家は資金を引きあげ投資が激減。
経済成長は鈍化し、エネルギー不足やインフレ、失業率の増加が起きた。ついで言えば大規模な抗議によって観光客も激減した。

他にも中南米は、格差是正に幻想を抱き、その副作用に長い間苦しまされてきた。
キューバのカストロ、ペルーのアルバラード、ニカラグアのオルテガ、ベネズエラのチャベス、アルゼンチンのキルチネルなどだ。

 

 

格差是正の定番コースを進みそうな先進国

先進国で盛んに言われている話も同じような傾向があると感じる。

民間企業を国有化したりする動機は、GAFAを解体しようとする動きに通じる。彼らは無数のスタートアップと競争し、誰もが使うテクノロジーで価値をあげてきた。彼らの成長は社会に風通しの良い競争やテクノロジーをもたらす健全な格差だ。国民に何の恩恵もないロシアの世襲の資源大富豪とは全然ちがう。

貧困層救済の目的で法人税や所得税を激増させるケースも、上で挙げた事例に何度もでてくる。
オカシオコルテス下院議員は、年収1000万ドル以上の富裕層に最大70%の所得税を課そうと主張している。歴史的には、こういう懲罰的課税で投資が激減することは目に見えている。

格差是正のためにばら撒こうとするのも似ている。
サンダース氏は、MMTを本当に信じているだろう。でもMMTも実は何も新しい話ではない。公的国内債務でデフォルトした事例は、過去200年で60件以上ある。

MMTは全く新しい話ではない(当サイト記事)

 

もうわかるように、先進国の格差是正の妄信は、今まで散々失敗してきた新興国と同じような結果になる可能性は十分ある。

 

 

日本人の格差への不満は大間違い

決して先進国の経済的疲弊は、格差が悪の根源ではないし、是正すれば経済的疲弊を脱するなどと言うこともない。

富裕層が占めるGDP比率、先進国の平均的にはこれは10%ほどだ。米国は長い間10%だった。近年これが14%に跳ね上がった。(台湾やロシアは15%ほど)

こういう急激な上昇が起きると格差への不満が増大する。
しかし日本はたったの2%だ。

日本の富の格差は、むしろ低すぎる。
スタートアップや、新産業の育成などを通じた、富の創造がまるで機能していない。日本の場合、格差だ格差だと言いながら、実は格差が起きないことの不満が動機になっている。

富の格差の問題は、中身をよく見て思い込みをやめないと、諸刃の剣になる。そんなことを考えさせる米国民主党党員集会だった。